KEC外語学院ブログBlog

ツインデミックではなくエイデミック=ADEMICへ

語源・町のお医者さん・水守勤三です。20151月のスタートから99回目になりました。読者の皆様がいてくださったからこそと感謝しています。有難うございます。回を重ねるにつれ、語源を活用した語彙の拡充という考え方が普及すれば、という想いも日増しに強くなっています。では、今回も想いをこめて、語源を語ります。お付き合いください。

辞書に出てこない TWINDEMIC

twindemicという言葉を最近、耳にします。コロナとインフルエンザが、双子=twin になってやってくる大流行=pandemic という意味が込められています。ニュースでは「同時流行」という言葉が当てられていました。

この twindemic は、私の電子辞書には出てきません。ネット接続の機能は付いていませんが、なかなかの優れものと自負しています。「*demic(メーカーにより「~demic)と検索するとpandemic, epidemic, endemic が出てきます。( academicも出てくるのですが、これに触れると振れ幅が大きくなり過ぎるため今回は通過します)ではなぜ twindemic は出てこないのでしょうか。そうです、twindemic が最近(今年の春)に登場=生み出された語だからです。

「英単語は覚えるもの」という固定観念

コロナの影響で「パンデミック」という語はかなり知名度が上がってしまいました。「ツインデミック」もこの冬のインフルエンザの流行り具合次第で定着していくかも知れないと思います。ツインデミックは決して喜ばしい単語ではありませんが、私たちは将来常識になるかも知れない単語の誕生に立ち会ったことになるかも知れません。

私たち英語学習者の多くは「単語は覚えるもの」という発想を持っていないでしょうか。twindemic という単語に、誰かが「同時流行」という日本語を付けると、「twindemic=同時流行」とセットになったことに何の疑問も持たずに受け入れる、これが癖のようになっていると私は考えます。ニュースで初めて twindemic という単語を聞いた時、日本語無しですぐに意味が伝わってきて、思わず「すごいな、上手いな」と思いました。

「覚える」から「理解する」へ発想の転換を

次の語を英語で表現してみてください。

非対称・貧血・原子・無神論・睡眠時無呼吸症候群 (答えは今回のブログの文末に)

如何でしょうか。ポイントは、接頭辞の a- です。「無・非・不」のような意味を持っています。今回は、コロナの終息を祈る気持ちで、また、できるものなら毎年多くの人が命を落とすインフルエンザも流行らなければいいなという気持ちで単語を作ってみました。それが「エイデミック」です。「大流行」を意味する pandemic の後部分 demic は、本来は people を意味するのですが、「多くの人が掛かる」というところから「流行」という意味を持つようになっています。これに否定の意味を持つ接頭辞 a- を付けて、ademic としてみました。また発音は「無神論」の atheism にあやかってみました。「流行する病気が無い状態 = エイデミック = ADEMIC 」如何でしょうか。思い切って「マスク無し生活」などと呼んでみたいと思います。

もちろん「dictionary = 辞書、biology = 生物学、…」的トレーニングは英語の基礎体力作りには必要不可欠です。その上で、いつまでも「英単語は覚えるもの」という発想だけでは、大人の思考に値する語彙を確保することは難しいと私は考えます。「日本語に置き換えていないのに英単語の気持ちが理解できる」・「必要な時には英単語を自分が作ってもよいのだ」というような考え方を持つことができれば、英語との付き合い方が大きく変化するのではないでしょうか。

次回で100回の区切りを迎えますが、その後も毎月第4木曜に語源の新シリーズをお届けします。ご期待ください。

単語の答え:asymmetry, anemia, atom, atheism, sleep-apnea syndrome

語源を学んで英会話力向上

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この記事の筆者

水守 勤三Kinzo Mizumori

大阪市出身。関西外国語大学・英米語学科卒業後、KEC教育グループ(英会話・予備校部門)入社。一貫して英語教育の第一線で現場指導に携わると共に、カリキュラム・指導法開発を担当。それに並行して、KEC独自の「TP指導システム」開発にも携わる。数十年の語学・英会話指導経験から、日本人が英会話を習得するうえでの学習・指導ポイントを熟知。「学習する者は教える者の人間性と意気に感じる」を信条に、授業に情熱を注ぐ傍ら、今も指導法の研究を続ける。

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