こんにちは、語源・街のお医者さん、水守勤三です。早速ですが、最近、気になるお相撲さんがいます。前頭三枚目の若隆景です。気になっているのは、相撲の取り口とか体格とかではなく、名前そのものです。「わかたかかげ」と発音してみてください。早口言葉にも使えるレベルではないでしょうか。「わ」以外の５文字が「爆発音」(正式には、破裂音)でできていて、それが連続しています。「統計」を意味する英単語 statistics でもよく似た感じで、発音できるようになると、ちょっと「鼻高」になります。

カシリビマブ・イムデビマブ

若隆景と同様に、気になっているものに、カシリビマブとイムデビマブがあります。英語にすると、casirivimab, imdevimab となるようです。コロナの治療法 抗体カクテル療法(antibody cocktail treatment/therapy)で使用されるふたつの薬の名前(全くの素人です。解釈に誤りがあればご容赦ください)ですが、アメリカのバイオテクノロジー企業が付けた商品名のようです。若隆景やstatistics と同様、なかなかすんなりとは発音させてくません。意味を知りたくて電子辞書の曖昧検索「～mab」をしてみると、唯一 Queen Mab が出てきました。「夢を支配する妖精の女王」で Shakespeare などの作品に登場している、とありました。薬品の名前との相関関係は定かではありませんが、妖精の女王がコロナをやっつけてくれることを願わずにはいられません。

では、本編に進みましょう。今回は、接頭辞 ab-とob-を取り上げます。

「離れる」イメージ ab-

三年前、平成天皇が退位をされたことで令和が始まりました。令和に変わる時期に、「退位」を英語で表現することはあった人の多くが、今言われると…、となったのではないでしょうか。始まりは、ab- です。同じ接頭辞を持つ仲間に、欠席・異常・乱用・誘拐・中絶 がいます。

present ⇔ absent, normal ⇔ abnormal, use ⇔ abuse, conduct ⇔ abduct, origin ⇔ abortion

接頭辞 ab- のイメージは「離れる」です。退位は、「離れると宣言する」⇒「離れると言う」、「言う」が出てくると、「前もって言う」＝「予言する」＝ predict や、「言ったことをまとめたもの」＝「辞書」＝ dictionary、「言うのが上手い人」＝「独裁者」＝ dictator と、語幹 dict, dic が出てくるといいですね。

退位する ＝ 離れる＋言う = ab- + dict ⇒ abdicate, abdication

語源の良さに、「記憶に留めやすい」・「記憶を呼び覚ましやすい」があると思います。

「…に対して・…の方へ」の ob-

接頭辞 ob- は、日本語の意味と同時に、英単語にして記憶するのが有効だと考えています。代表は、against, forward で、「何かに向かって(forward)行くと、何かにぶつかる(agaist)」が基本です。

そのままのイメージがある語をならべます。英語にしてみましょう。ob-が綴りを変えることも多いので、そこも楽しんでみましょう。

オブジェ・障害物・観察する・発生する・嫌な気持ちにさせる・差し出す・機会

object, obstacle, observe, occur, offend, offer, opportunity

これらの語は、ob-部分を取り除くと、語幹がはっきり見えてくる語ばかりです。是非、辞書やネットで語源を確認して、語幹も増やしていってみましょう。

今回を含め４回で、次の１３の接頭辞を扱いました。

re-, in-, ex-, inter-, pre-, pro-, com-, syn-, super-, sur-, sub-, ab-, ob-

そろそろ「接頭辞はどこまで続くのかな」という気持ちも生まれて来ているかも知れません。あと２回でまとめてみます。お楽しみに。