KEC外語学院ブログBlog
”メンタル”という単語の先に見えてくる語源と英語の意味の世界
接頭辞から見えてくる共通イメージ
こんにちは、自称、語源・町のお医者さん・水守勤三です。
2回連続で、季節にまつわる単語を追いかけてみました。梅雨の時期の花・紫陽花=hydrangea、そして、夏至=the summer solsticeや秋分の日=the autumnal equinox、如何でしょうか、水、太陽、均等を単語の中に見て頂けましたでしょうか。
さて、今回は、これらの実践的な語彙から離れ、『基本技』に戻ってお話をしてみようと思います。私が考えます語源の視点を育てる『基本技』は4つあります。これまでに、『接頭辞ad-』・『接頭辞de-』・『同化』をご紹介してきました。如何でしょうか。意味するところはイメージして頂けるでしょうか。
それでは語源の視点を育てる『基本技』の最後の項目に入っていきましょう。
”メンタル”から見えてくる言葉の世界
昨夜、テレビでゴルフの全英オープンを見ていました。松山英樹選手が4日競技の3日目を優秀な成績で終えました。解説をしている人たちが、『日本の選手はこのような期待の掛かる場面で、よく潰れていっています。松山選手はすごい!』と言っていました。そうです、勝負が掛かった時の日本人選手の『メンタル』の弱さがよくファンの期待を裏切る原因となってきました。
mentalはphysicalとのセットで、『気持ちの面』というような意味合いでカタカナ語として使われています。名詞形にmentality=『知力・知性・心的傾向』を持っていますが、スポーツで優勝が掛かった時に登場するmentalの名詞の意味としてはすっきりこないように思います。実は、mentalにはもうひとつ根本となる名詞形があります。如何でしょうか。
これまでと同様に、mentalという単語に切れ目を入れてみましょう。-al は形容詞を意味する接尾辞(名詞も作る)ですので、ment/alとなります。そうすると語幹はment となります。この辺りで予測をした上で、辞書の語源欄で、このment がmind から来ていることを確認してみましょう。母音の変化(今回は e ⇒ i )は語源の世界ではよく起こる現象です。では、”t”⇒”d”の変化にはどのようなルールがあるのでしょうか。
それが今回ご紹介します”語源を見る目を育てる最後の基本技”である『有声音・無声音』です。
音の面からも語源を分析する
単語の最後の音”[t]”と”[d]”を意識しながら、ment, mind と発音をしてみてくだい。”[t]”・”[d]”の口の形・舌の動き・息の出て行き方が同じであることに気付かれたことと思います。([ ]カッコは発音記号を表示する意味で使用しています。)
荒っぽい表現をしますと『有声音は声、無声音は息』となります。専門的には『有声音は声帯が震える音、無声音は声帯が震えない音』と定義されます。
母音はすべて有声音ですが、”[d]”・”[t]”、 ”[z]”・”[s]” 、 ”[b]”・”[p]” 、 ”[g]”・”[k]”のように子音の多くが対になります。有声音・無声音が分かると難しそうに見える単語に隠れた基本単語を理解し、記憶の安定度をアップすることができます。
次の2つの単語に共通して存在する基本単語に気付いてみてください。ヒントはそう!『有声音と無声音』です。
ignore, recognize
ignore=無視する・怠る・知らないふりをする
recognize=人に覚えがある・識別する、人がだれであるかわかる
gn- ⇒ kn- ⇒ know = 知っている
単語と意味だけのセットで覚えようのと、そこに『へぇー、know という単語が絡んでいるんだ』と納得を入れてみるのでは、味わいが違うのではないでしょうか。ここがやっぱり語源をお勧めしたくなる理由です。ちなみにこの単語、世界史を熱心に勉強した人であればグノーシス主義、最近で言えば情報系アプリのグノシーの元になった単語です。そのままの形で今に残る単語でいえば diagnosis = 診断。それではまた、次回にお会いしましょう。
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