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知っていて損はない英語の接頭辞シリーズ④:“善悪・良し悪し特集”  

善悪を分かつ英語の接頭辞

語源・町のお医者さん・水守勤三です。

ライブ版・語彙講座・上級編を10月16日に実施しました。8月28日の初級を皮切りに9月の中級、そして10月の上級と、今シーズンの語彙講座が終了しました。どなたもご自分の目指すものをしっかりと持っておられ、単に語彙力を強化したいというのではなく、自己実現に向けたステップとして受講してくださったという感想が残りました。

さて、本日は私たちの日常に存在する対比の代表として“善悪・良し悪し”を取り上げてみます。

学生時代に覚えた言葉に「ベネディクト会」があります。調べてみると「ヌルシアのベネディトの会則に従う最古のカトリック修道会」と書かれています。語源をするようになってから、ベネディクトという言葉がそれまでの知識としての言葉から「感情」を持った言葉になりました。お坊さん風に漢字で表すと「善言さん」そんな感じです。接頭辞bene-は「善」を、語幹dictはdictionaryやpredictに出てくる「言う」を表しています。

まずこのラテン語から流れてきているbene-を見てみましょう。次の4つの語をbene-で始まる英語に置き換えてみてください。

接頭辞bene-の意味するものとは?

恩恵(=利益)・善行(=事前)・祝福・善意の ⇒ benefit, benefaction, benediction, benevolent

それぞれの語が持つプラスのイメージとbene-がマッチしていることに気付かれるでしょう。

最後の語benevolentを分析しますと、接頭辞はbene-、接尾辞は形容詞を作る-ent、残るvolが語幹になります。台風・洪水・火山の噴火などが起こると各地から駆けつけてこられるのがvolunteerの人、形容詞形に「voluntary=自発的な」があり、「vol=wish」という関係が見えてきます。結果として、「benevolent=良い意志の=善意の」となるのは自然な流れとなっています。

では、「善意の」があれば「悪意の」もあるはずです。如何ですか、bene-と対をなす接頭辞はご存知でしょうか。その接頭辞で始まる次の単語を答えてみてください。

接頭辞mal- の意外な意味

悪意・栄養失調・医療過誤・マラリア ⇒ malice, malnutrition, malpractice, malaria

「bene- ⇔ mal-, male-」そこから「善意の=benevolent ⇔ 悪意の=malevolent」となります。サッカーやボクシングの熱心なファンもしくは経験者であれば、マリーシアという言葉を聞いたことがあるかもしれません。maliciaと書きますが、良い意味での『ズル賢さ』という意味です。malicious=悪意がある、から来ていると考えられています。

euとdysは「善」と「悪」?

これに対して、ギリシア語から生まれているセットもあります。まず、「善」から言ってみましょう。英語に直してみましょう。

賛辞・音調のよい・消化良好・安楽死・理想郷 ⇒ eulogy, euphonic, eupepsia, euthanasia, eutopia, 

偶然ではありますが、「欧州連合=European Union」の略称が「EU」となっているのも興味深いのではないでしょうか。

では「善・良=eu-」と対をなすギリシア語語源の「悪」を見てみましょう。英語にしてみてください。

消化不良・機能障害・筋ジストロフィー・暗黒郷 ・発声困難⇒ dyspepsia, dysfunction, muscular dystrophy, dystopia, dysphonia

dys-は性質上、病気の名前に多く登場します。病気の名前を表す接尾辞-iaとセットになることも多い接頭辞です。多くの方々が、dys-, -iaと戦っておられることと思います。bene-, eu-への変化が生まれることを気持ちだけしかございませんが応援しております。

如何でしたか、「bene- ⇔ mal-, male-」・「eu- ⇔ dys-」にも、『登場回数が少ない=意味が限定・明確』というルールが当てはまります。記憶に留めておけば、それぞれの単語が持つ方向性のようなものが見える接頭辞と言えるでしょう。

次回は、「善⇔悪」のような対をなす接頭辞として「前⇔後ろ」を取り上げてみます。お楽しみに。

この記事の筆者

水守 勤三Kinzo Mizumori

大阪市出身。関西外国語大学・英米語学科卒業後、KEC教育グループ(英会話・予備校部門)入社。一貫して英語教育の第一線で現場指導に携わると共に、カリキュラム・指導法開発を担当。それに並行して、KEC独自の「TP指導システム」開発にも携わる。数十年の語学・英会話指導経験から、日本人が英会話を習得するうえでの学習・指導ポイントを熟知。「学習する者は教える者の人間性と意気に感じる」を信条に、授業に情熱を注ぐ傍ら、今も指導法の研究を続ける。

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