KEC外語学院ブログBlog

語源に取り組む意義

語源・町のお医者さん・水守勤三です。6月のブログ更新に際して、操作ミスをしてしまいアップが“第4木曜日”を過ぎてしまいました。7月に入って「毎月読んでいるという訳ではないのですが、先月、更新されていなかったではないでしょうか…」というメールを頂戴しました。操作ミスを悔いる気持ちとともに、更新の日まで意識して読んでくださっている方がおられることに感激しました。

さて、100回完結に向けた大きな視点からの語源見直しの第2回として、私が考える「英単語の語源に取り組む意義」をまとめてみます。

昨日よりも豊かな語彙力作りの原動力

「語彙力はあるに越したことはない」という考えは、英語に取り組む日本人の多くに共通する意見だと思います。仕事や学校、また資格試験取得などで必然性のある英語と向き合う時の障害のひとつに「知らない単語」があり、また、趣味で英語に触れる時でも、内容に没頭したいにも関わらず知らない単語に気を散らされることもあります。

2014年615日にスタンフォード大学の卒業式で、ビル・ゲイツの妻であるミリンダさんが行った3分のスピーチがあります。非常に平易に語られていますが、それでも次のような語が含まれています。

optimism, forgiveness, shirk, leftover, empathy, intensify, incredibly, sacrifice, ingredient, absolute, spouse

母国語と同様に身近で具体的なものから徐々に抽象的な世界に広がるのがことばの世界だと思います。従って、語彙力の強化は、英語に関係する限り一生続くもののように思います。その時に、英単語と意味が一対一で繋がる語彙力養成以上のものが語源にあり、語源が新たな語彙獲得に向けての原動力になると考えます。

単純作業から知的楽しみへの変化

では、問題をひとつ。「happyを変化させてみてください」

happiness, happily, unhappy がきっと上がってくると思います。確かに、–ness は名詞語尾であり、形容詞 + -ly = 副詞、また、否定の接頭辞に un- があることも語源的な取り組みのひとつではありますが、あくまでも「作業」であり、そこに「楽しさ」は感じないように思います。そこで語源を意識して、もう少しだけ踏み込み、happen, perhaps, mishap, hapless, haphazard 語幹hap = 運のグループとすると、そこに知的な楽しさや広がりが生まれてくる、と私は考えます。

語彙力をアップさせる方法の確立

メリンダ・ゲイツさんのスピーチにある「shirk = (義務・責任など)を回避する」をネットの辞書

weblio で調べると、学習レベル15となっています(optimism でレベル6)。「難しい単語」⇒「知らなくてもよい単語」と考えてしまう面もありますが、メリンダさんのスピーチをもし現場で聴いていたとすると「意味を理解していたい語」だっただろうなと思います。shirkそのものは語源を辿ってもあまり記憶のための効果性が高い単語とは言えませんが、そのような単語への体力と気力を残しておくためにも、happy, happiness, happily, happen, perhaps, mishap, hapless, haphazard のような語源的アプローチが有効な大多数の語彙を習得するための方法を持つことが必要だと考えます。

学校現場を見てみると、来年度から実施される指導要領の改訂で、取り扱う単語の数は次のように変わります。(前が現行、後が改定後)

高 校 約1800語 ⇒ 約2500語(最大幅) 中学校 約1200語 ⇒ 約1700語 小学校         新規約600語  合 計 約3000語 ⇒ 約4800語

中学だけでみると、おおよそ1.5倍になります。方法論を持たずに、努力のみで戦いに行くことを求めらているのが現状であるように感じます。

人生の楽しみとしての語彙鑑賞

論語を生活の規範として位置付けている方がたくさんおられます。語源を追いかけていると、論語と同じように、何かを教えられることがあります。少し例を出してみます。トップは advice。分解すると「ad- = …へ + vice = 見る」ここから「そうか、人に助言する時は、現場を“見に行く”ことが必要なんだな」と考えました。次に understand。正に、understandです。私には「そうか、理解しようと思ったら、一度は、“下に立たんと”あかんねんなぁ」と見えます。人間関係であまりうまくいかない時、ついつい「遠ざけて」しまうものです。だから、一度は、その人の下に立つ気持ちで近づいてみる、そんなことを教えてくれているように“勝手に”考えています。

効率的な語彙力養成方法

tenacious = 意見などに固執する・粘り強い」という単語を覚えようとする時に、語幹tainグループを既に知っているとすると、暗記するための労力は極端に減らすことができます(詳しくは424日のブログをご参照ください)。語源を勉強する一番目に見えやすいメリットですので、長々とした説明は不要だと思います。

今回もブログらしからぬ長さなってしまいました。まだまだ語源の良さはあると思いますが、お伝えしないといけないことは書かせて頂きました。では、また来月お会いしましょう。

語源を学んで英会話力向上

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この記事の筆者

水守 勤三Kinzo Mizumori

大阪市出身。関西外国語大学・英米語学科卒業後、KEC教育グループ(英会話・予備校部門)入社。一貫して英語教育の第一線で現場指導に携わると共に、カリキュラム・指導法開発を担当。それに並行して、KEC独自の「TP指導システム」開発にも携わる。数十年の語学・英会話指導経験から、日本人が英会話を習得するうえでの学習・指導ポイントを熟知。「学習する者は教える者の人間性と意気に感じる」を信条に、授業に情熱を注ぐ傍ら、今も指導法の研究を続ける。

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